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米国首都ワシントンDCへの旅

子孫の会 会員 T.Y.

「ようこそ、そしてお帰りなさい」
そう言って私たち一行を歓迎して下さったのは、ワシントンの老舗ホテル、ウィラード・インターコンチネンタルの総支配人、ジム・ヴェイル氏。今春、万延元年遣米使節子孫の会の会員らでご先祖さまの足跡をたどるべく、米国の首都に到着した日のことでした。1860年に徳川幕府から派遣された77名の使節たちがひと月近く投宿したホテルに、私たち子孫のグループも数日間滞在する機会に恵まれました。ホワイトハウスからほど近く、キング牧師がかの有名な演説の原稿を完成させたという同ホテルには、創業以来の歴史写真やパネルで展示されたギャラリーがあり、 152年前にサムライ使節たちが滞在した当時の様子が描かれた米国の新聞の挿絵等も掲げられています。 「皆さまのご滞在は当ホテルの新たな歴史となりました」とヴェイル氏。

ピーコック・アレイと呼ばれるホテルの瀟洒な通廊でアフタヌーンティーを愉しみ、長旅の疲れを癒やした一行は、 春の陽射しが美しい街へと繰り出しショッピングなど思い思いの自由時間を過ごしました。

翌日は市内観光。幕末に使節団の三使らが視察に訪れ、 のちの横須賀製鉄所(造船所)開設のインスピレーションとなったワシントンの海軍工廠を訪れ、 使節と米提督らが一緒に写真に収まったとされる辺りで記念撮影、敷地内にある海軍博物館を見学しました。 その後、新緑に映える白亜の連邦議会議事堂(使節訪問時は建設中だったようですが今回も一部修復中でした)、 リンカーン記念館、ケネディ三兄弟が眠るアーリントン国立墓地を訪問。ワシントン・ハーバーにて昼食の後、 ハリーポッターに出てきそうなジョージタウン大学のキャンパスと学生街を散策しました。市中心部に戻って、 子孫の会の村垣孝会長が長年勤務された世界銀行を見学させていただきました。 並み居る世界のエグゼクティブたちの会議風景を横目に見つつ、アーカイブでは日本が世銀から借款を受けた高度成長期の文書等を拝見し、 日本も国際社会からの支援や融資を受けながら発展したことを実感しました。帰路はホワイトハウスの周辺を散策。 夜はホテルに隣接する老舗レストラン、オクシデンタル・グリルで会食し、ワシントン名物のシーフードなどに舌鼓を打ちました。

3日目は、ポトマック河をオデッセイ号でクルージング。ご先祖さまが幕末に米外輪船フィラデルフィア号で遡り、 当時建設中のワシントン記念塔などを目にしながら海軍造船所に上陸したという航路を一部たどることができました。 のどかな河の流れと岸辺にそよぐ柳など木々の若葉が往時の風景をしのばせてくれました。 約2時間のクルーズ中には生バンドの演奏に合わせて子孫の皆さんが踊る場面も。 下船後はそれぞれにお目当ての博物館見学などへ赴きました。

4日目は、日米桜寄贈100周年を迎えた桜祭りの会場を訪れ、午前中に華やかなパレードを観覧した後、 午後は日米協会のジョン・マロット会長、藤崎一郎駐米大使にご挨拶をさせていただきました。会場となっている目抜き通りは、 着物や和傘、お面を身に付けた米国人や、寿司や鯛焼きの屋台で賑わい、 日本文化の浸透ぶりを実感するイベントでした。夜は名店オールド・エビット・グリルにて会食。 米国版・舟盛りともいうべき新鮮な牡蠣や海老などの盛り合わせや、地元名物クラブケーキなどを堪能しました。

幕末の使節はスミソニアン博物館などの施設も訪れたようですが、 私たちもダレス国際空港近くに03年にオープンしたスミソニアンの航空宇宙博物館別館や、ナショナル・モールの同本館、 ナショナル・ギャラリーで開催中の伊藤若沖展などを見学。博物館の展示物には広島に原爆を投下したエノラ・ゲイや日本の特攻機もあり、 日米のたどった歴史を考える時、いまこうして再び平和な時代に米国を訪れることができることの尊さを考えずにはいられませんでした。

それにしても、米艦ポーハタン号で太平洋を横断し米国に長期滞在した使節たちにとっては、ワシントンなどで盛大な歓迎を受ける一方で、 慣れない食事や言語・習慣に加え、大方の米国人にとって初めて見る日本人として好奇の目にさらされたり、 帰国しても米国各地で見聞した感動を分かち合える人が僅かしかいなかったことなどを考えると、 現代の私たちからは想像もつかない苦労やストレスもあったことでしょう。歴史本を読むだけでは実感のわかなかったことが、 子孫の皆さんと一緒に現地を訪れたことで身近に感じ取ることができた気がしました。そして、私たちが思いを馳せることで、 ご先祖さまたちも喜んでくれたのであれば嬉しく思います。

「私が皆さんのご先祖さまのチェックイン手続きをしたんですよ」
最終日の朝、 ウィラード・ホテルをチェックアウトした私たちをユーモアたっぷりのコメントで笑わせてくれたのは、 初老のホテルマン、スティーヴ・ブルームさん。 152年前と今を繋ぐ旅。この貴重な機会をアレンジして下さいました村垣会長ご夫妻始め幹事の皆様にあらためて御礼申し上げます。